

鹿児島県出水市には、毎年10月中頃から12月頃にかけて、1万羽以上のツルがシベリアなどから渡来し、3月頃まで越冬します。「つる」のつく地名が残るなど出水市は古くからのツルの渡来地であり、戦後は長きにわたりツルの保護活動を続けてきました。世界で確認されている15種類のツルのうち、出水市にはこれまで7種類が渡来した記録があり、「ナベヅル」は世界の8割、「マナヅル」も4割が越冬するといわれています。越冬する数と種類の多さは日本一であり、「鹿児島県のツル及びその渡来地」として国の特別天然記念物にも指定されています。


出水市の越冬地は3本の河川が流れ込む八代海に面する干拓地で、そのほとんどが水田です。水田が主に登録されている渡来地は世界でも珍しい事例です。出水市では渡来時期になると、干拓地にある水田を生産者から借り上げて休遊地にします。その際、生産者は収穫後の稲株から生える二番穂をわざと残しており、それが11月のツルの重要な餌となります。越冬中にツルが畔を壊したりするので、出水市は春に復旧して生産者に返却。また、渡来地周辺の生産者にはツルによる食害対策として防護資材を配布するなど、ツルと人の共生のための方策をいくつも講じています。

2021年に「出水ツルの越冬地」としてラムサール条約湿地に登録され、2022年には出水市が新潟市と共に国内初のラムサール条約湿地自治体の認証を受けました。出水市では出水ラムサールブランドを立ち上げて市内の農産物や加工品の販売促進に生かしています。また、ツルの存在が自然や共生を学ぶ機会になっており、渡来地は市内の小学生の良いフィールドワークの場所ともなっています。


ツルに関する調査研究を進めながら、さまざまな情報の展示や教育普及活動を行っている施設です。
所在地:鹿児島県出水市文化町1000