全農
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生産者の声
泉州きくな(春菊)
植田 吉宏さん(63歳)
大阪府岸和田市阿間河滝町
春菊、水菜、
紅ズイキ生産者

第一次産業を大事にしないと
日本の食も、山も海も
今以上に大きな問題が起こりますよ

新規就農者は本当に偉い!  農家は知恵も工夫も努力も、お金も必要な仕事です。特に近年は先行投資が欠かせないと感じます。省力化できる部分に機械や資材を導入して、なるべく自分の身体に負担がかからない環境をつくるんです。身体の調子が良くないと、良い作物もできませんからね。だから、新規就農者は本当に偉いと思うんです。私は何代も続く農家出身で、ある程度の農地も施設も器具も受け継いで始めました。しかし、新規就農の人は鍬一本から買わなければなりません。新規就農者には国も手厚い補助をして欲しいですね。

時代に合った後進の育成法  我が家の畑の隣にも、就農して2年目の若手が頑張っています。農業や栽培について聞きに来てくれたら、隠す必要なんてないので何でも答えています。今と昔では、教え方も随分と変わりました。自分が若い頃は、周りの先輩は丁寧には教えてくれませんでした。だから、見習いたい先輩の畑に誰もいない早朝に訪れて観察したもんですよ。しかしながら、時代に沿ったやり方がありますからね。あの頃と同じようにしては、そもそも農業を敬遠するようになり後進は育ちません。我が家でも、息子に跡を継いでもらう状態に持っていくのが親の務めだと思って、融通をきかせながらやってきました。有難いことに継いでくれたので一安心ですよ。数年はじっくりと経験を積んで、農家としての自覚と自信を強めていってもらいたいですね。

第一次産業にとっての天気  結局農家は、最終的には自分の判断がものをいう世界です。天候は毎年のように「今年は異常だ」と言われるようになっています。似たような畑でも日当たり、土壌の保水力、肥料の状態などすべて違う中で、天候とも向き合わなければなりません。状況を分析してセオリーはこうだけど、「今年はこうする!」「今日はこうする!」という決断力が、農家には大事だと思います。条件がみんな違うので農業は難しいですよ。だからこそ面白いし、チャンスもあるんですけどね。
 最近気になるのはあるテレビ番組の天気予報です。天気予報士がユニークなイラストを用いて解説しているんですが、天気におふざけは必要ないですよ。農家にとって天気は死活問題ですから。漁師さんにとっては命がかかっています。第一次産業にとって天気ほど大事なものはないですから真剣にやってもらいたい。第一次産業をもっと大事に思う社会になって欲しいし、後継者たちのためにも、農業が正しく認められる社会であり続けてほしいんですよ。


泉州きくな(春菊)

 春に花が咲き菊に似ていることが名前の由来の春菊。関西では「菊菜(きくな)」とも呼ばれています。「最後の数秒鍋に入れるだけで美味しく茹で上がる春菊が理想」と語る生産者の植田さんは、泉州きくなの特徴を次のように説明します。「他産地では摘み取りといって上だけ(葉だけ)をカットして出荷します。一方で大阪では株ありといって軸ごと出荷するんです。軸のない方がきれいに見えるかもしれませんが、食味は1000%勝ってます」。