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生産者の声
泉州水なす
阪本 寿和さん(51歳)
大阪府泉佐野市下瓦屋
泉州水なす 生産者

日本国民の食を守る
そういう意識を持って農家は日々
作物と向き合っているんです

特徴の多い水なす  なすは奈良時代に国内で栽培されていた記録が残っています。栽培の歴史が古い作物なので、それぞれの土地に合わせた独自の品種が発達していきました。大阪南部でつくられる泉州水なすもその一つです。丸い形でその名の通り水分を多く含み、外皮が柔らかく生でも食べられるなど、なすの中でも独自の特徴をいくつも持っています。
 栽培での特性を挙げると、水なすは千両なすと違って、蜂による自然交配ができません。自然交配させると水なす特有の柔らかさが出ずに固くなってしまいます。そのため、花の一つひとつをスプレーでホルモン処理をして交配させていくんです。これは最も神経を使う作業の一つになります。また、柔らかい実を風に揺れた葉っぱで傷つけないよう、葉っぱを剪定する作業もデリケートな工程ですね。取りすぎると樹勢が弱まるので、丁度良い塩梅を見極めるのも生産者の腕になります。

産地形成に欠かせないJA  農家は毎日が勉強です。同じ天候は二度とないので、培った経験から導き出す見極めが大事になってきます。分からない時は、JAの営農指導員や部会の先輩方が頼りですね。私が所属する大阪泉州水なす生産出荷部会は、20代から70代後半まで150人以上が所属する大所帯で、互いに厳しい目を持って品質の維持向上に努めています。産地の形成では地元JAは欠かせない存在です。JA職員の産地を守る努力は、農家以上だと感じますね。「大阪泉州の農畜産物を大事に売らないといけない」という気持ちをしっかり持っていると思います。JAと農家は持ちつ持たれつの関係です。だから農家の視点から「それは違うぞ」と感じたら叱咤激励を入れに行くことだってあります。

国民の食を守る意識  この辺りは都市型農業で、生活者と非常に近い場所で農業をやっています。地方の農業県と比べて売り先が近くて多いというメリットがある一方で、国からの助成や補助は随分と少ないというデメリットもあり一長一短があります。
 昨今は円安で資材が高騰しています。本当だったらもっと売価を上げてもらいたいのですが、近くに住む生活者の家計を直撃するのが分かっているので、我々農家は黙って頑張っているんですよ。日本の農家の多くが、自分達が日本国民の食を守っているという気概で作物をつくっていると思います。だからこそ、国にはもう少し農業振興に力を入れてもらいたいと切に願います。


泉州水なす

 柔らかくてあくの少ない品種で、定番の漬物は非常に高い人気を得ています。実を搾ると水がじゃばじゃば出るほど、内部に多くの水を含んでおり、昔の農家の人は喉の渇きを水なすで潤していたといいます。近年では、サラダをはじめとする生で食べるレシピも評判です。生産者の阪本さんは家では味噌汁や天ぷらでよく使うそうで「水なすは光沢があり、拳くらいの大きさのものを選ぶと良い」と語ります。