アナログの作物をデジタルで
管理するには限界があります
答えはいつも
作物が教えてくれるんです
パっと見た時に、「水が欲しいよ」や「寒いよ」など、トマトがどんなメッセージを発しているかが分かり始めたのは就農してから10年目くらいでした。それまでの期間は、何をやっているのかが全然分からなくて、辛いし焦りも凄く感じていたんです。当地でトマト栽培が盛んになり生産部会ができたのは約40年前。父はできたばかりの部会長を務めるなど、「あの人に聞けば問題が解決する」といったように、周囲からも頼られる存在でした。そのため、自分は早く追い越さなければならないという、いわゆる「2世のプレッシャー」もあったんです。でも、ある時から父は父、自分は自分だと考えるようになってから楽になり、トマトや農業との向き合い方も変わったと思います。
機械の前にまず基本
トマトを作って20年以上になりますが、父は一度も褒めてくれたことはありません。ダメな点を指摘するだけで、その回数が年々減っていくという感じです。ただ、基本的な指導は父ですが、トマトのことを教えてくれるのはトマトなんですよ。トマトが先生なので、「次は何を教えてもらえるか」という気持ちで日々の作業に励んでいます。
僕は圃場に足を運んだだけ上手くなると思っています。今は圃場に行かなくても管理できる機械がどんどん開発されていますが、アナログの作物をデジタルで計るには限界があると感じます。機械を扱うにも、トマト栽培の基本的な知識と経験の土台が必要でしょう。現在、JA豊橋トマト部会の部会長を務めているのですが、僕から見ると中にはラクをしていると感じる若い人もいますね。産地を見比べると、当地は量では九州の大産地には勝てません。だから、どこまでも質を追求する必要があると僕は考えているんです。
当地には70歳前後の父と同世代の先輩の中に、物凄く技術のある方がおられます。その方の圃場に行くと、自分の家のトマトと同じ顔をしているんですよ。逆にその方が、我が家のハウスに来ると他の人とは全然違った質問をされます。それで後日、その方の圃場を訪れると我が家の方法が見事に模倣されているんです。真似できると言うのはそれだけ技術があるということです。先輩方の技術力は当地を支えてきた財産なわけですよ。そういったトマトの見方や栽培技術を後輩に伝えるのも自分の仕事だと思っています。
とよはしトマト
赤くて歯応えのある美味しいトマトづくりを目指すJA豊橋トマト部会は、2018年度の農林水産祭で農林水産業者・団体の最高賞である天皇杯(園芸部門)を受賞しました。同会の部会長を勤める池田さんは「天皇杯は名誉なことです。しかし、それを隠してでも『豊橋のトマトは立派だ』と関係者や生活者に選んでもらえるように、日々努力を続けることが大切」と語ります。
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