全農
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生産者の声
おのだネギ三昧
松村 正勝さん(54歳)
山口県山陽小野田市西高泊
ネギ、ミニトマト、
チンゲンサイ生産者

若い世代がいかに農業で
豊かに暮らしていけるか。
その実現が我々世代の仕事です

何世紀も続く開作の歴史  瀬戸内海に面する山陽小野田市は、江戸時代から幾度も新田開発を目的とした干拓事業が行われており、長州藩の財政を支えました。太平洋戦争後の食料不足の時も、国営干拓事業が昭和30年代に開始され、私の父親がその土地に入植し、新たに農業を始めたんです。

 当然稲作をするために開作された場所ですが、入植当時は大地から塩が湧くため稲作はとてもできる状態ではありませんでした。そこで父親は暗渠排水を干拓地に導入して、大地の塩抜きを行い、作物が育つ土壌を根気よくつくり上げたんです。いよいよ米づくりができるようになった頃、世の中は米余り・減反政策の時代に。米を出荷しても売れないと考えた父親は、ネギの栽培を始めたんです。その翌年に大学を卒業した私は、父親の下で農業をスタートしました。

多様な人材が活躍する農業  それからハウスと従業員を少しずつ増やしていき、30年が経った現在は、ハウスと露地がそれぞれ約5haずつ、社員、パートタイマー、技能実習生などを合わせて約50人のスタッフを抱える会社になりました。スタッフは世代、性別、国籍の違う人材が集まっており、どう働きたいかの考え方が人それぞれです。例えば、日本人は週休二日のワークライフバランスを意識した働き方が普通で、外国人は多く仕送りをしたいから残業をしたいし休日も希望しません。本人の思いを尊重しつつ、仕事量などのバランスを調整しながら運営しています。当社は女性の多い職場で、2020年には女性活躍に関する農林水産大臣賞を受賞しました。育休産休がきちんと取れるのはもちろん、保育園の送り迎えと仕事の両立など、意欲あるスタッフが最大限活躍できるよう制度の更新を続けています。

生産費は高騰、野菜の価格は変わらず  働く環境づくりに力を入れるのは、一人ひとりの力を最大限に発揮してもらうためです。そうしないと、資材費や人件費が上がり続ける中で、経営が成り立たないんですよ。例えば最低賃金は、30年前は約570円でしたが2024年は979円です。一方で、ネギの取引価格は30年前と変わっていません。採算をとるには倍以上の作業効率が必要で機械化や効率化が必須になります。変わり続ける生産環境に対処する経営手腕が、今まで以上に求められるでしょう。当社の生産部スタッフは平均年齢30歳くらい。若い世代がいかに農業で豊かに暮らしていけるか。その実現が私の大きな仕事ですから知恵を絞り続けます。


宇治おのだネギ三昧茶

 松村さんが代表を務める「グリーンハウス」で生まれたブランドネギ。干拓地の塩分ストレスと灌水制限で鍛えられた濃厚な味と豊かな風味が特徴です。「グリーンハウス」は国際認証の1つ「ASIAGAP」を取得し、生産工程管理を徹底し安心安全な野菜作りに努めています。松村さんは「食感も良いのでサッと茹でてサラダにして食べても美味しいんですよ。地元のイベントに出店した時に、ネギをふんだんに使用したネギ焼きを出したら大変好評でした」と語ります。