「ときわ公園」は宇部市の南東部に立地する約189haの面積を有する総合公園です。常盤湖を囲うように整備され、3千5百本のサクラや2万株のハナショウブなど四季折々の草花が園内を彩ります。また、植物館や動物園、遊園地などもあり、「最も長く続いている野外彫刻展」としてギネス世界記録®に認定された「UBEビエンナーレ」の舞台としても知られています。
ときわ公園が開設されたのは1925(大正14)年です。明治時代以降、常盤湖の湖岸は自然風景を生かした景勝地として知られており、別荘地として有力者や料亭経営者などが土地を持っていました。そのような中、炭鉱事業で身を興し、現在の工業都市・宇部市の礎を築いた渡邊祐策らにより、常盤湖周辺の土地購入活動が進められ、その後、市に寄贈されて公園となりました。
宇部市は戦後に石炭産業で国の復興を支えましたが、一方で工場から排出されるばいじんにより「世界一灰の降るまち」と報じられるなど甚大な「ばいじん公害」が問題に。そこで全国に先駆けて「産・官・学・民」からなる「宇部市ばいじん対策委員会」を設置し、全市民が一体となった「宇部方式」と呼ばれる独自の公害対策の取り組みを積極的に進めました。「緑化運動」「花いっぱい運動」などが市内で展開され、その中から「宇部を彫刻で飾る運動」へ発展。ときわ公園も宇部市の姿勢を体現する場として再整備が進みました。
ときわ公園の中心にある常盤湖は、山口県最大の湖で江戸時代につくられた人造湖です。山口県を治めた毛利氏は関ケ原の合戦で敗北。領土は中国地方8か国から防長2か国のみとなり財政が一気に苦しくなります。そのような事情から領内では積極的に農地の開作政策が進められており、1695年に常盤湖の築堤工事が始まり3年の月日を経て完成しました。さらに用水路などを整備することで、約300haの水田を灌漑することができたといいます。このような歴史から2016年には国際かんがい排水委員会(ICID)から、世界かんがい施設遺跡への登録を受けています。