ゆでぼし大根
馬鈴薯、スイカ、
カボチャ他 生産者
茹でて干してと丁寧に
手間暇かけてつくるから
旨みが凝縮されて美味しいんです
ゆでぼし大根は一般的な切り干し(千切)大根と違い、その名の通り加工する際に茹でる工程が入ります。つくり方を簡単に説明すると、まずは畑から収穫した大根を洗います。次に、傷がある部分を包丁で切り落としてから千切りにします。そして、細かく切った大根を釜で10〜15分くらい茹でた後に干し場に広げます。干し時間は海風の良い時で一晩から一日半くらい。適度に水分が飛んだ状態になったら、仕上げに乾燥機に入れて完成です。
海沿いの断崖絶壁の高所に築いた干し場には、冷たく強い北西の季節風が吹きつけ、水分を含んだ白い大根はカラカラのあめ色に変色します。この干し場は、約40年前に地元の農家が自分達でつくりました。以前は海沿いの低地に干し場を設けていたのですが、「山の上に干し場があればもっと良い風が当たるだろう」という発想から計画したと聞いています。親父も仲間と一緒に資材を一本ずつ手作業で足場から組み上げていました。夕方になると作業を労う飲み会が行われていて、幼かった私も大人に混ざって軽食を食べながら、地域の活況を肌で感じていました。今も現役で約20軒の農家が利用する地域農業のとても大事な財産です。「本当によくつくったな」といつも感心しますよ。
時代に合った使い方の考察
ゆでぼし大根は私の爺ちゃんの爺ちゃんの頃、つまり江戸時代にはあったと聞きます。元々は保存食として長崎県に広まり、産地として大々的に始めたのが西海市と五島市です。家では肉じゃがでよく使いますし、昔は鯨と混ぜて食べていましたね。ゆでぼし大根はあっさりとしているので、脂の多い食材との相性も良いんですよ。
昔からゆでぼし大根を知っている人は調理方法も分かりますが、使い方が分からない人にとっては興味の持ちようがありません。知らない若い人も気軽に利用できるように、レシピの発信などを生産部会でも話し合っているところです。食物繊維やビタミン、ミネラルも豊富で、健康食品としてもピッタリだと思います。それに現在は、環境や身体に優しいオーガニック食品を目指して、JASマークの取得、有機肥料や減農薬による大根栽培にも取り組んでいます。より多くの方の食卓に上るよう、時代に合わせた変化を続けながら、何世代も前から受け継ぐ伝統の味をつないでいきたいと思っています。
ゆでぼし大根
西海市と五島市だけでつくられる特産品です。茹でてからから干しているので、大根本来の旨みが凝縮されています。加えて、千切大根よりも軟らかく、調理すると味が内側までよくしみ込みます。橋口さんは「加工の段階で一度火を通しているので、水やお湯で戻して、そのままサラダとしてドレッシングをかけるだけでも美味しく食べられます」と語ります。