滋賀県は東近江地域をはじめいちごの栽培が盛んで、特に近年は、いちごに取り組む新規就農者も増えています。しかし、県内農家が主に栽培するのは、県外で育成された品種であり、現場から県独自の新品種を求める声が高まりました。そこで滋賀県は、農業技術振興センターでのオリジナル品種の育成を開始。2016年からプロジェクトが始まりました。しかし、県内で育種をするのは初めての経験で、担当した研究員らは試行錯誤を繰り返しながら取り組んだと言います。
新品種の父親と母親を決める際は、滋賀県の気候風土や栽培環境に合うよう、県内でもっとも栽培されている「章姫(あきひめ)」を父親に選定します。その上で、章姫のウイークポイントをカバーする狙いから、果実が傷みにくく甘みと酸味のバランスが良い「かおり野」が選ばれました。
この父母の交配により得られた約1,600個体の候補から、優良品種を絞り込んでいく作業が5年の歳月をかけて行われました。選抜作業では多い時に、1日に200個ものいちごを研究員らは食べ比べたと言います。幾多の苦労の末、「滋賀SB2号」という1系統が新品種に選抜されます。
新品種が選ばれてからは、2年間かけた栽培方法の検証がスタート。栽培マニュアルなどの作成が進みました。また並行して名前を公募し、約7,600通の中から「みおしずく」に決定します。「みおしずく」は2022年の試験販売を経て、2023年から本格的にデビューを果たしました。