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交通の要所として栄えた佐敷 交通の要所として栄えた佐敷

 熊本県南部に位置する葦北郡。その中央を貫流する佐敷川と湯浦川の合流点にある河口には古くは計石港と呼ばれた佐敷港があります。鉄道が開通する前は、球磨地方と熊本方面、天草諸島をつなぐ交通の要所として人々の暮らしを支えていました。中世に球磨地方を治めていた相良氏が、海の玄関口を求めて当地に進出した際に、自領で信仰を集めていた由緒ある諏訪神社を佐敷港の河口付近に移し、統治の要の一つとしました。

鎌に宿る女神 鎌に宿る女神

 この佐敷諏訪神社の御神紋は、2本の鎌をモチーフとした違い鎌です。鎌(薙鎌)は諏訪大社の総本社である諏訪大社の神器の一つ。開拓や五穀豊穣の象徴として知られ、諏訪神社が諸国に広まるにつれて、鎌の形は変化を見せ、当地では草刈り鎌が御神紋になったのではないかと佐敷諏訪神社の宮司は語ります。また、佐敷諏訪神社に祀られている下照姫神(シタテルヒメ)は大国主命の娘で、鎌に宿るといわれます。地上の繫栄や農業に深く関係する神であり、この縁も御神紋が鎌になった要因ではないかといわれます。下照姫神を祀る諏訪神社は、当社の他は数が少なく珍しいそうです。

一年の農具を揃える例大祭 一年の農具を揃える例大祭

 佐敷諏訪神社と農業の深い関わりを示す一つが、田植えの前に奉納祈願して豊作や地域の安寧を祈る4月末の例大祭です。一昔前までは、境内の前に農具店をはじめ、鍛冶屋、苗木屋などたくさんの店が出ており、その年に使う農具を買いそろえるために大勢の人で賑わいました。鍛冶屋などが少なくなった現在は、農具を求める風習は消えています。しかし、地域の大きなお祭りとして参拝者が集まり、その昔に疫病退散から始まったと伝わる蕨粉の奉献が、現在まで継承されています。

佐敷諏訪神社 建御名方神(主神) 下照姫神(妹神) 八坂刀売命(后神) 佐敷諏訪神社 建御名方神(主神) 下照姫神(妹神) 八坂刀売命(后神)