熊本県と鹿児島県の県境に近い葦北郡津奈木町にある亀萬酒造は、天然醸造では日本最南端の蔵元です。温暖な環境下で、アルコール発酵時に室温が上がり過ぎず適温を維持できるよう、もろみに大量の氷を加えて調整する「南端氷仕込み」という独自に編み出した方法で酒造りを行います。現在は、四代目の杜氏・竹田瑠典さんが100年続く蔵元で、「持続可能」を意識した取り組みを展開しています。
約12年前、世間は芋焼酎ブームで地元でも日本酒を飲む人はほとんどいませんでした。地域の消防団の集まりに行っても、出るのはビールか焼酎でさみしい思いをしました。地酒屋として次の100年を考えた時、何が大切かと突き詰めると、一番は地元だという答えに行きついたんです。地元の人に愛してもらい、誇りになり、宝となる。そんな応援してもらえるような蔵元にならなければいけない。それで、地元でつくられた酒米の山田錦を全量、契約での買取を始めました。米づくりをしている農家さんと関係を強くし一番のファンになってもらえれば、地元で広まっていくのではないかと考えたんです。現在では、亀萬の日本酒を置いてくれる飲食店が増え、新酒祭を町役場が合同開催してくれるなど、地元からの支援を以前より感じています。これからもクオリティの高い日本酒を製造し、地元で大切に育ててもらった山田錦を高く購入させてもらうサイクルを維持していきます。若手農家が未来を築ける、米づくりをして良かったと言われるようになるのが一番の目標です。