トマト
農業は大変ですが周囲への感謝と
楽しさを忘れず
挑戦していきたいですね
私の農地がある長野市松代町清野はトマトときゅうりが有名な場所です。直売所でも「清野の野菜です」というと「あの美味しいところね」と言われるくらい地域にブランド力があります。先輩方の栽培技術はもちろん、肥沃な土地と地域で共同で使っているミネラルたっぷりの地下水が美味しい夏野菜を育ててくれるんですよ。
私の出身は長野県でも南部で、結婚を機に妻の実家である長野市に移り住みました。元々は会社員をしていましたが、小さい頃から農業に対する関心が強く、農業高校、農業大学校と進学していました。しかしいざ就職するとなると、当時は農業で生計を立てる自信がなく諦めたんです。就職前は青森県と鹿児島県を移動して養蜂をする方の元で、数か月間、勉強をしたこともありました。養蜂はとても面白かったのですが、季節ごとに北や南に場所を変える移動養蜂しかご飯は食べられないと、その師匠から言われて、会社員をしながら趣味として養蜂を続けました。
生き生きとした農家の姿 転機が訪れたのは10年ほど経ってから。先ほど述べたように妻の故郷で新生活を始めようとしたんですが、中々就職先が見つかりませんでした。そんな時、長野県安曇野市の知り合いの農家から「夏いちごの交配用の蜜蜂の調子が悪いから見に来てほしい」と連絡が来て訪問したんです。その農家が生き生きと農業をしている姿を見て、家庭を持って農業で生計を立てるイメージがついて、「農業をしたい」「農業でもいけるんじゃないか」と決心できたんです。学生時代の恩師から紹介された農園でトマトづくりの研修をしてから、運よく農地も見つかり長野市で農業をスタートさせました。
地域の支えと感謝の気持ち
蜂蜜を欲しいというお客さんがいるので、今も養蜂は数量を限定して続けています。トマトの最盛期と重なるので5〜6月がとにかく忙しくなるんですよ。その時期は義理の両親や親戚など家族を巻き込んで作業をしています。10年間やってきて、一人では解決できない問題も多々ありましたが、周囲の方々が外からやって来た私を受け入れてくれ、支えてくれたから乗り越えられました。今では自分の地元より知り合いが多くなっています。地域貢献という大層なものではないですが、夏の忙しい時期を助けてくれるパートさんの冬の仕事をつくりたくて、花木のユーカリの栽培も始めました。まだ上手く軌道には乗っていませんが、改善しながら良くしていきたいと考えています。
もうすぐ3人目の子供が生まれる予定で、益々頑張らないといけなくなりました。しっかりと稼げる農業経営を意識しながら、農業の面白さを忘れず、長野市で家族と一緒に楽しく暮らしたいと思います。
トマト
長野市松代町清野地区は、早くからビニールハウスでの栽培が始まるなど、長年にわたりトマトの栽培技術が磨かれた場所です。大玉トマトで主に栽培される桃太郎トマトは、「甘みと酸味のバランスが良く、味わいのあるトマト」と高い評価を得ています。生産者の北澤さんは「水の管理に加え、栄養と生殖成長の塩梅がポイント」と栽培の難しさを語ります。桃太郎トマトには兄弟種がたくさん存在し、清野地区では土壌の特徴に合わせて種類を選んで育てています。