夏を代表するフルーツとして人気の高い桃は、全国で生食用として約12万トン、100以上の品種が生産されています(2017年)。数ある品種の中で、品種別の栽培面積で第3位、全体の約1割を占めるのが、長野県長野市川中島地区で誕生した川中島白桃です。
元々、長野市の桃づくりは篠ノ井地区の東福寺周辺が古くから盛んで、「東福寺もも」と呼ばれて人気を得ていました。戦後、昭和30年代から北隣の川中島地区でも生産者が増え、熱心な篤農家が登場します。その一人が池田正元(マサヨシ)さんで、自身の畑でさまざまな工夫をして品種改良を進める中で、とびきり美味しい桃を発見しました。「池田1号」の名称で市場に出荷したところ、「味、日持ちが抜群」という評価を得ます。将来性を予見した池田さんは、生産仲間に苗木を無償で分け与え、川中島地区の生産者らに広まったのです。多くの生産者が栽培技術の向上に力を注ぐ中、「全国的なブランドに育てよう」という気運が高まり、1977(昭和52)年に「川中島白桃」と命名されました。
池田さんは、この他にも「川中島白鳳」「黄金桃」という今でも川中島地区の主力品種を生み出しました。また、長野県果樹試験場(須坂市)で開発され、現在、全国の栽培面積でトップ10に入る「なつっこ」は、あかつき(栽培面積1位)と川中島白桃を交配した品種です。川中島地区にルーツを持ち、全国各地で栽培される桃たちは、今年も日本中で「美味しい」という感動と多くの笑顔を生み出します。
食味と質の良さから生産量が増加。現在は日本の桃の主力品種の一つで、桃の王様とも称されます。8月中旬から出荷され、果実は300g程度と大きく、甘くしっかりとした肉質です。
「川中島白桃」と「愛知白桃」の交配で誕生した品種。果肉は白くやわらかく、ジューシーで、酸味は少なく上品な甘さが特徴です。川中島白桃の姉妹品種として「桃の女王」とも称されます。
池田さんの園地の川中島白桃から偶然生まれた品種です。果皮も実も黄色い黄桃系に分類される品種で、甘みが強くジューシーで、濃厚な味わいで人気を得ています。
須坂市の長野県果樹試験場で「川中島白桃」と「あかつき」を掛け合わせて育成された品種。2000(平成12)年に品種登録されました。果実は300~350gと大きく、酸味が少なくて甘味は強めです。