全農
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生産者の声
デコポン
萩原信一さん(61歳)
天草市五和町
果樹生産者
写真右:真由美さん(妻)

今の若い人を惹きつけるためにも
昔の農業のイメージを
変えていきたい

 JA本渡五和の管内である天草市(本渡地域・五和地域)では、デコポン、晩柑、ポンカンの3種類が柑橘栽培の柱です。天草の地形は山間部が多く、水はけの良い斜面につくられた圃場がたくさん整備されています。温暖な気候も手伝って糖度の高い柑橘が育ちやすいんですよ。我が家では極早生みかん、デコポン、晩柑を経営の軸にしています。デコポンに関しては加温栽培、屋根掛け栽培、露地栽培の3種類を手掛けており、12月の贈答用から6月の貯蔵品まで切れ目のないリレー出荷を行います。
 デコポンとは「不知火(しらぬひ)」とその近縁種における熊本県果実農業協同組合連合会の登録商標で、糖度や酸味、見た目など多岐にわたる厳しい基準を満たした「不知火(しらぬひ)」だけが、デコポンとして市場に出荷されます。デコポンは冬場に果皮障害が発生するなど、なかなか栽培が難しい品種で、私もだいたい半分くらいがデコポンとして認められる感じですね。

安定経営を叶えるデコポン  天草のデコポンは平成元年頃に本格的に導入されました。初めて見た時は正直、「こんなゴツゴツとしたいびつな形の柑橘が売れるのか?」と思ったものです。試験栽培されたものは味にばらつきもありましたが、美味いのを食べた時に「これは絶対にいける!」と確信しましたね。当時の柑橘農家は昭和の終わりに温州みかんの価格の大暴落を経験し、新しい安定した品種を待ち望んでいたんですよ。事実、県下の生産者の努力によりデコポンの品質が向上すると、価格も我々の収益も安定してきました。

若手を魅了する見本を目指す  私は自身のこだわりとして「かっこいい農家」を目指しています。最近新しく建てた作業場兼倉庫も、農家の小屋ではなくガレージハウスをイメージしたデザインです。ちょうどウクライナで戦争が始まり資材が高騰したので費用的には大変でしたよ(笑)。それでも、やっぱり果樹農家として頑張って、若い人に見本を見せたいわけです。昔の農業のままでは、若い人もついてきません。現役農家がしっかり稼いで、安定した生活を確立しながら、自分なりの農業やライフスタイルを実現する姿を見せるのが、後継者育成の面でも大事だと思います。誰であれやりたいことをやっている姿が、一番かっこ良く映るでしょう。今年の3月にはアパレル業界で働いていた息子が里に帰って就農します。彼にも自分が納得できる農業を体現してほしいですね。


デコポン

 1972年に長崎県の農林水産省果樹試験場にて、清見と中野3号ポンカンの交配から誕生したのが「不知火(しらぬひ)」です。「デコポン」は熊本県果実農業協同組合連合の登録商標で、同連合会から許可されたJAだけが、基準を満たしたものを「デコポン」として出荷できます。萩原さんは「多汁で糖度が高く酸の切れも良い。果皮は簡単にむけて食べやすいし、玉を割った時の香りも特徴がありとても良いんですよ」と語ります。