益城すいか
大規模な農業事業者だけではなく
日本の多くの農地を守っている
小さな個人農家にも
目を向けてもらいたい
益城町の西瓜栽培の特徴は、真冬の厳冬期でも暖房機を使わずにハウスのビニールの被覆を調整して生産している点です。この技術により、熊本県内でも他の産地が出荷をしない1月や2月も益城町産は市場に流通します。厳冬期における西瓜づくりのノウハウは昔から当地で受け継がれてきました。ハウス内のビニールは3重構造になっており、外側、内側のトンネル、地面に敷くマルチシートの3つを「今年は外側」「来年はトンネル」というようにそれぞれ3年周期で交換しています。暖房設備を使わないので、高騰する重油代はかかりませんが、ビニール価格の上昇は頭の痛いところです。昨今は農作物の値段以外は何でも上がる状態と言いますか、資材も肥料も運賃も上がっており、我々の経営に影響していますね。それに加えて、地震や台風に対する備えや復旧も進めないといけないので、考えることややることはたくさんありますね。
震度7直後の西瓜栽培
益城町も2016年の熊本地震では大きな被害を受けました。自宅やハウス、作業小屋が倒壊した方が大勢おられます。私も自宅や作業小屋が全壊しました。でも、家族に怪我人がいなかったので良かったですよ。被災後は仮設住宅で一時期暮らしていました。それまで普通にできていたことが、できなくなり1年くらいはずっと大変でしたね。
地震が起こった4月は、西瓜の管理や収穫で忙しい時期です。あの頃、一変した周囲の状況や景色を見ていろいろな感情が湧いて来て立ち止まりたくもなりましたが、西瓜の世話をしている時だけは、無心というか、栽培以外のことを考えなくて済んだんです。私は西瓜の他に田んぼを持っていますが、地震で水路が崩壊した結果、水稲はまったく見通しが立たなくなりました。それで地区のみんなで急遽、水をさほど必要としない大豆を植えるようにしたんです。植えた大豆はJAが買い取ってくれて助かりましたよ。あの時期は、仕事に逃げられたというか...。何もすることがないといろいろと思い悩んでいたでしょう。私は農業という仕事があって本当に恵まれていたと思います。
地震から6年が経ち、復旧も進んできましたが、完全に復興するのは後何年先になるでしょうね。でも、私の周囲では地震を機に離農した人はいなかったですし、これからも同じ地区のみんなと農業に励んでいきます。
益城すいか
11月から翌年6月に収穫される「益城すいか」は、早出しの産地として市場関係者に知られています。昼夜の寒暖差の大きさを生かしながら、暖房を用いないエコな手法で育てられており、高い糖度と品質には定評があります。守山さんは「果肉は緻密で濃厚な甘さです。シャリっとした食感の良さも『益城すいか』の特徴の一つですね」と語ります。