小糸在来®枝豆 生産者
先代が残してくれた
農作業日誌は
先生であり財産です
私の農場がある台地は、江戸時代中期に豪商らが資金を出し合い農地を開拓したと伝わります。この辺りの土は、富士山による火山灰が降り積もった後に生えた木々が、枯れて腐敗して灰と共に土になった「黒ボク土」です。日本では古くからは農産物が良く育つ土であると知られており、黒い色と歩くとボクボクという感触があることからその名がついたと言われます。特に、根菜類の生育に適しており、黒ボク土の多い千葉県はかぶの生産量で全国1位です。君津市も以前はかぶ一本で勝負をする農家が多かった地域です。ただ近年は、直売所が増えたこともあり、君津市全体で見ると少量多品目の農家が増加する傾向にあります。我が家でも周年でかぶを手掛けつつ、にんじんやキャベツ、豆類などの栽培もしています。
先代が残した大きな財産
我が家は7代以上も続く農家ですが、若い頃は休みがなく作業も大変な農業が嫌で、外に働きに出ていました。しかし、親が身体を壊した時に最後の親孝行と思って45歳で就農を決めたんです。農業の技術を修得するにあたって教科書となったのは、親が長年にわたって書き続けていた農作業日誌でした。日誌の通りに作付けをして、書いてある状態と同じように実った時は、作る喜びとやりがいを感じました。農業にとって記録を残していくのは一番大事だと思います。最近は天候が不順で例年通りとはいきませんが、状況が似た年の日誌を参考にすると、良いものができるんですよ。
私は担い手の育成にも力を入れており、私の元で研修をして就農した方が5人います。最近は農業へ憧れを持っている方も増えていると感じます。特に千葉県の内房総は東京にも近く、少量多品目による直売所での勝負ができるので、農業を新規で始めやすい環境だと思うんです。その反面、就農希望者は野菜をつくる技術だけではなく、どう売るかを修得する必要があり、そちらの方が断然難しいですね。
当地は農業以外の仕事もたくさんあり、農家の息子が後を継がないケースも多い場所です。でも、遠い昔の先祖から受け継がれた豊かな土地を、耕作放棄地にはしたくないんですよ。昔は50軒で手がけていた面積も、農耕機械の発達により今では10人程度の担い手でカバーできるようになっています。一人でも多くの後進を育てて、せめてこの台地くらいは守りたいと思っています。
かぶ
柔らかい黒ボク土で育つ君津市のかぶは、定番の漬物の他にも、サラダや肉詰めなどの料理にも利用されています。最近は葉っぱのニーズも増えていると鈴木さんは説明します。「かぶの葉は、大根の葉とは異なる食感があります。当地はかぶ以外の作物も美味しい場所です。オーナー制度の体験農場もやっている農家も多いので、ぜひ君津の野菜をたくさん味わってください」。
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