「濃溝の滝・亀岩の洞窟」を有する君津市内の清水渓流広場は、初夏には蛍が舞い、秋には紅葉が鮮やかに色付くなど、四季を感じる自然豊かな観光名所として知られます。特に洞窟から射し込む光が水面に反射し、ハート形を描き出す亀岩の洞窟は、撮影スポットとして来訪者の多くがカメラを向けます。洞窟内に亀に似た岩があることが名前の由来となる亀岩の洞窟、そして洞窟内を含む滝と言うには緩やかな段差の濃溝の滝は、どちらも江戸時代に「川廻し」によって人工的につくられたものです。
川廻しは蛇行する川筋を、堀やトンネルで短絡して、蛇行していた部分を埋め立てる河川工事です。主な目的は水田開発や林業用地の獲得になります。高い山がなく川底の勾配が緩やかで岩質の柔らかい上総地方では、川廻しによる地形が「濃溝の滝・亀岩の洞窟」以外にも数多く存在しています。
「濃溝の滝・亀岩の洞窟」では、笹川の蛇行の始まりと終わりが接近した部分に長さ30mのトンネルがつくられました。その結果、導水溝の入口と出口で落差5mの滝と、900mの旧河川を埋め立てた約3町歩(3ha)の水田がつくられたと伝わります。