全農
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生産者の声
秋田米
佐々木 竜孝さん(60歳)
    息子_柊さん(写真左)
秋田県仙北郡美郷町
米 生産者

米農家は地域の土地を守る存在
次代を担う若手が育つよう
時代に合わせた農業を
伸ばしていく

 学生の頃から家業の米農家を継がざるを得ないと考えていました。だから、中学校の進路面談は「農業高校に行きます」で約1分、高校の時は「いずれ農業を継ぎます」と約30秒で終わったのを記憶しています。卒業後は春と秋にそれぞれ2~3カ月は農業に従事して、それ以外は近所の建設会社に勤める兼業農家として働きました。転機が訪れたのは約20年前。この地域で無人ヘリコプターで田んぼに防除する取り組みが始まり、そのスタッフに就任することになりました。同時期に大きな圃場整備事業が始まり、それまで1枚の田んぼの面積が10a(1,000m2)程度だったのが、50a~100aという大きな面積になったんです。夏の防除作業という仕事が生まれ、田んぼの作業効率も上がり、そして親父の年齢のこともあり専業農家に切り替えたんです。

増える耕作面積と省力化  昔に比べて今は田んぼに入る機会を減らした栽培方法が進んでいます。防除に関しても昔は道具を背負って田んぼの中を歩いて散布していましたが、今はラジコンヘリを飛ばして行います。また、追肥を必要としない栽培方法を採用しているので、その分の労力を削減できています。農業従事者の高齢化などを理由に、一人当たりの栽培面積が拡大していく中で、面積が増えても対応できる農業のやり方を、集落営農で農地を守る当地の先輩は前々から模索してきたんです。
 追肥を行わない栽培方法を採用している理由は他にもあります。当地は平場ですが、多収にはあまり向いていない環境なんです。同じ美郷町でも10aで12俵取れる地域もありますが、当地は10俵以上を取ろうとすると、倒伏するリスクが高くなります。それで先輩たちは「収量を上げるより、美味しい米づくりを目指そう」と決めて栽培技術を蓄積していきました。そのおかげで「あきたこまち」の中でも美味しい米が取れる地域になった歴史があるんです。量より質を追求した技術は、今年本格的にデビューする秋田米の最上級米「サキホコレ」にも応用できました。

後継者の行先と地域の未来  私は「サキホコレ」の栽培に最初から関わる生産者の一人です。今年から就農した息子に「俺はこういうことをやったんだよ」と言えるし、挑戦的な取り組みの実例を見せられたのは大きいと思っています。
 息子は今年24歳で、とりあえず今は私とは別で野菜を手掛けています。しかし、私が動けなくなったら米づくりを引き継いでもらわなければなりません。米と野菜の両立は可能ではありますが、広大な面積を有する集落営農を支える一人となるため、なかなか難しいと思います。自分の家の問題だけではなく、地域を考えないといけないんです。これからの修業期間に何を学び、何を身につけるかは、息子も悩んでいますね。同世代の若いメンバーが集落営農の中に2人、3人と増えれば可能性も広がるでしょう。そのためにも魅力ある地域農業を発信できるよう、私もまだまだ頑張ります。


秋田米

 日本有数の米どころ秋田県では、「あきたこまち」を筆頭に「ひとめぼれ」や「めんこいな」など、さまざまな品種の米が栽培されています。そんな中、2022年秋に本格デビューするのが「中部132号」と「秋田97号(つぶぞろい)」の交配から生まれた「サキホコレ」です。コシヒカリを超える極良食味品種をコンセプトに開発された品種で、佐々木さんは「『あきたこまち』と同様に粘りもあるが、上品な味わいです」と語ります。