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生産者の声 呉羽梨
土田 昭さん(69歳)
富山県富山市
梨生産者

包丁の正しい使い方を学び
果物の皮を剥くのも
大事な食育ではないでしょうか

 富山県のほぼ中央にある呉羽丘陵では、明治30年代から梨の生産が始まりました。標高80m程度の丘陵地帯は水の確保が難しい上に水はけが良いため稲作に不向き。当地に合う作物はないかと土池弥次郎(どいけやじろう)さんが全国を巡って日本梨に目をつけ、試行錯誤して栽培を軌道に乗せました。現在の栽培面積は約130ha(1ha=10,000m2)で、生産量は2,000トン近く。県内をはじめ、関西、中京エリアなどに「呉羽梨」として出荷されます。
 私は梨農家になって50年になります。平成の初めは市場価格に恵まれていました。しかし、バブル崩壊と同時に単価が下落し、市場以外の収入を得るために庭先販売が増えました。ここ最近は農家数が減ったこともあり、市場価格も上向いて市場出荷率は上がっています。

遠回りから得る学び  近年では呉羽梨のブランド力を上げるために、さまざまな部分で統一を強化しています。収穫の時期に「目ぞろえ会」を開いて品質等級に対する意識統一はもちろん、樹をつくる作業、農薬防除のタイミングなどを揃えています。県民100万人の富山県だけで、これだけの量の梨は食べることができないので、関西や中京でも長く愛されるよう生産者で努力を重ねているところです。当地の20~40代の生産者でつくるグループには約40名が所属しており、梨づくりの研究に励んでいます。後進のためにも少しでも良い栽培と販売環境を残したいですね。
 最近、気になるのは包丁で果物の皮を剥けない人が増えたことによる梨離れです。時代が違うと言えばそれまでですが、私が小学生の時は筆箱の中にナイフが入っていましたよ。危険な面だけに着目して刃物から遠ざけられた結果、大人でも満足に扱えない人がいます。大人が剥けないなら子供に教えないのは当然です。私は教育でも少しは昔に戻った方が良いと思います。今は登下校のルートに大人が立って、安全に同じ道を歩ませます。昔はたくさん寄り道をして、遠回りをして帰りました。その過程で、色んなものを見て学び、友達との交流も深くなった記憶があります。あまりに過保護すぎる教育は、その時は良いですが、大事なものを得る機会も失われると...、まあ、今と昔を比べると思うわけです。


呉羽梨

 年間の寒暖差が大きい環境で育つ呉羽梨は、糖度の高い実をつけることで知られます。品種は8月から初秋の幸水をメインに、豊水、新高、あきづきと11月までリレー。土田さんは美味しい梨の見分け方を次のように語ります。「表面に艶があり形が良いのが美味しいです。遠方出荷はどうしても収穫のタイミングが早くなるので、完熟のもぎたてを味わいたいならぜひ当地に来てください」。

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