agrifuture vol.48
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P.10JAとさしの工芸 土佐和紙は約1000年以上前には製造されていたと考えられており、「土佐日記」を著した紀貫之は、国司として紙製造を奨励したと伝わっている。明治時代には土佐和紙の恩人と言われる「吉井源太」が用具改良や新製品の開発に力を注ぎ、その後の発展の礎を築いた。機械化などの時流に押され紙すきは全国的に衰退したが、「土佐和紙」という名で高知県の手すき和紙が国の伝統的工芸品に指定されるなど、その価値は今なお高く評価されている。「土佐和紙の特長は300種類とも言われるほど、さまざまな紙の種類をすいてきた歴史を持つ点です。一つに頼ることなく多様性を維持することで、時々の需要に合わせて、今日まで伝統をつなげてきました。最近では欧米での人気が高く壁紙やグリーティングカードに利用されています。地元にある清瀧寺の住職さんは『地元の和紙を使う』と言ってくれていて、同寺のお札は私がすいているんです。近年は全国的に寺社仏閣でも機械すきの和紙が増えており、清瀧寺のお札を手にした時に『手触りが違う』と分かる人は感心してくれるそうで、同寺における一つの特長となっています」土佐和紙1000年の伝統を持つ伝統工芸先人が築きし匠の業を、今に継承する――紙すき職人・石元健昇さん(土佐市高岡町) 畳が一般大衆化した戦後すぐの頃、土佐市では「青いダイヤ」と呼ばれたい草を生産する農家が500軒以上も存在したという。土佐のい草は粘りと強さがあり全国的にも評価が高く、備後畳などの材料としても重宝された。その反面、土佐という名前での独自ブランド化が進まず、安価な中国産の参入などの影響を受け、徐々に価格は下がっていったという。現在では全国で300軒ほどに生産農家が減っており、土佐市内では3軒が残っている。「土佐のい草で作った畳表は、表皮が固く青過ぎず、時間が経つと黄金色に変わるのが特長です。文化財などで使用される上質な国産畳だと、畳表にい草がしっかりと詰まっているので、例えばタバコの火が落ちても畳表の裏側に空気が回らないため火が消えます。近年はコストを重視し紙や樹脂系の畳表が出回っていますが、素材感や香りなど、い草にしか出せない良さをもっと知ってもらいたいですね。今度、我が家の息子が後継者として家に入るのですが、実に土佐市では私以来となる40年振りの後継者です。息子にしっかりと技術を継承して、土佐の畳表を残していってもらいたいと考えています」土佐い草国内屈指の品質を誇る青いダイヤ生産者・野村和仁さん(土佐市本村) 明治天皇に果物を献上する際、木材をかんなで糸状に削ったものを緩衝材として使用したことが木毛のはじまりとされている。昭和40年代には全国に120社以上を数えた木毛業者も、昭和50年代に入り、石油系の緩衝材が台頭するようになり急速に業界が縮小した。現在では、木毛を専業とする企業は土佐市にある「戸田商行」ただ1軒となっている。戸田商行は高知県産の原木にこだわり、緩衝材に留まらない木毛の価値創出を追求している。「松や杉、檜、楠など、高知県産の原木を使用し、品質にこだわった木毛作りを行っています。良品で知られるJAとさしのメロンやスイカには、すべての箱で当社の木毛が緩衝材として用いられているんです。生の物は生の素材に包んで運んであげるのが良いと好評ですね。木毛は香りも豊かで防虫効果も期待できるので、捨てずに靴の中に入れるとシューズキーパーとしても再利用できます。最近では、アロマグッズやペットの敷床材、人形の詰め物などに利用するほか、吸音効果を生かしてスピーカーへの利用も県の関係者と共同試験しています」木毛森林王国・日本で育まれた木の文化戸田商行・戸田実知子さん(土佐市本村)もくめん

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